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~第十六話⑤~ ベールの下の女王の素顔

Author: 倉橋
last update Huling Na-update: 2025-09-16 20:56:02

 エブリー・スタインがムーン・ラット・キッス女王の前に仁王立ちする。嘲りの表情と共に、黒いベールを引っ張った。アマンの叫び。

「エブリー・スタイン公子、何をするんです」

 黒く長いベールがフワリと床に落ちる。エブリー・スタインが両足で踏みつける。

 だがエブリー・スタインの勝ち誇った顔もそこまでだった。

 ベールをはがした女王の顔。見よ。彼の前には、髪の毛が薄く額が広がり、口の大きな男の顔があった。間違いなく彼女いない歴五十年の顔だ。

 待て待て、待って欲しい。この見苦しすぎる中年男性の顔が、ムーン・ラット・キッス女王の素顔だというのだろうか?

 エブリー・スタインは思わず後ずさりした。自分の目の前の光景が信じられなかった。

「ボク、ツルッキー。モテタイ、モテタイ。JKヤJDトツキアイタイヨ。ミンナボクノコトアイテニシテクレナイ。タスケテ、タスケテ」

 耳が痛くなるようなキンキン声がエブリー・スタインの耳に入ってきた。

 そして女性の澄んだ声が続く。

「あなたの願い、今すぐかなえます」

 一瞬のうちにツルッキーの頭部が、髪の毛がフサフサのカッコいいアクティブショートに変身した。

 何人もの若い女性たちの声が王宮に響き渡る。

「キャーーーッ、見て」

「髪の毛がフサフサのあなたって本当にセクシー」

「お願い、私を愛人にして」

「あなたのそばにいられれば、それでいいの」

 ツルッキーの幸せそうな声。

「男性用カツラ『アドランス』を使ってから、女性が向こうから僕に近づいてきて、今では選ぶのに困るほどです。『アドランス』のお陰でフーゾクも会員制の動画サイトも必要なくなって、バラ色の毎日です。ハハ、ハハハハハ」

 エブリー・スタインは何が起こっているのか、サッパリ分からず茫然自失の状態で立ち尽くしていた。思わず両手で髪の毛をかきむしめ。

「な、何なんだ、これは?」

 エブリー・スタインの絶叫が、ツルッキーの笑いに重なる。

 そしてムーン・ラット・キッス女王の高笑いが王宮を占領した。

「ホホホ、これは日本の男性用カツラの会社のデモンストレーション用のAIロボットだ。私がここへ来るほどお人よしと思ったら大きな間違いだ。愚か者め」

 高笑いに続き、カチカチと規則的な音が聞こえてきた。カチカチ音は、止まることなく連続して続く。

 この音は、まさか時限爆弾の音なの
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